埼玉県内の女流書家の名品を一堂に展示する第28回さいたま閨秀100選展(産経新聞社主催、埼玉県後援)が17日、さいたま市浦和区の埼玉県立近代美術館で始まった。会場には、県内の会派、流派を問わず、斬新で個性あふれる名品が多数寄せられ、書愛好家の目を楽しませている。
書家の息づかいや、書への思いなどを感じさせる作品が多いなか、昨年3月にあつた東日本大震災を悼む作品も目立った。
東日本大震災のため卒業式を中止した立教新座中学。卒業式に代わり生徒に送った言葉が、「卒業式を中止した立教新座中学校3年生諸君へ」。同校の渡辺憲司校長が卒業生に送った言葉を佐伯方舟氏が、書にした。みずみずしい感性とともみに力強さを感ずる作品ど、「(東日本日本大震災を受けて)地球人とはなにか。地球上に共に生きるということは何か。そのことを考えます」というメッセージ性の強いこの書は、見るものの足をとめ、考えさせる作品だ。

また、連続27回出品の秋山渓川氏の作品「杷酒」は、師匠であった田中松亭氏が書ひいたことばだ。「師匠が書いたこの言葉が私も好きで、自分の書風にもあっており、今年はこの字を書かせていただきました」と秋山氏。

今回初出品のと斎藤梅苑氏作「彩」。埼玉県が好きでこの字をかいたという斎藤氏。「昨年、大震災が起こり、暗い気持ちになりました。この気持ちを少しでも明るくなって欲しいという願いから、この字を書きました」。彩の国の埼玉県。書家もまた書の立場から、被災地の早い復興を願っている。

昨年夏に病気で亡くした娘を弔うために、この書を書いたという石井松苑氏。仏教用語である「妙法」という言葉に、自分自身が願う、平和、安寧の気持ちを込めた。というのも、「闘病の末に亡くなった娘の安らかな旅立ちの意味も込めた」からだ。「最愛の娘を亡くし、その傷みで筆が持てなかった」。ようやく筆をもつことができたときに浮かんできた言葉が「妙法」だつた。まさに鎮魂の書だ。
初日は、夫の産経国際書会常務理事の石井長慶氏とともに会場を訪れ、作品を見つめた。

太平洋戦争で父を亡くした。その父が亡くなったミャンマー(旧ビルマ)にはまだ平和が訪れていない。「何にもまして平和が一番。昨年の東日本大震災もそうですが、いつも平和であるよう願っています」と小金澤郁子氏。

脳梗塞の疑いで入院したのが今年の一月。幸い、病気は重くはなかったが、気を揉んだのが、書のことだった。退院できたものの、閨秀展締め切りまで、あと15日しかなかつた。「入院中、書のことが気になり、ずっと構想を練っていました」と渡辺司幸氏。娘が裁断してくれた紙に、好きな松尾芭蕉の五句を書いた。「しゆじんの龍をまず書いて、五つの句を書いて行きました」と司幸氏。構想通りに書くことができ、満足のいく作品に仕上がった。

「昨年の東日本大震災でたくさんの方々が亡くなられました。その方々の魂の鎮魂のために書いたのが、この作品です」と浅井順歩氏。一気に書き上げた作品は、力強く、男らしい書に仕上がり、初出品ながら多くの人の目を引く。「二本の筆を使い、鎮魂の気持ちを込めて書きました」と話す。
書を通じての海外文化交流にも参加して10回になる。中国、ベトナム、ハワイ、沖縄で書を披露し、昨年は訪れたチエコで小学生、中学生と一緒になって書を書いてきた。なかには、白Tシャツに書を書き、たいへんよろこばれたという。「これからも書を書き続けていきたい」の抱負を述べていた。
会場には、静かな空気が流れ、来場者も優しい目で作品を見守っていた。展覧会は22日(日)まで。入場無料。(柏崎幸三)
詳しくは、いべさんHPへ!
by 産経新聞企画事業局
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